アンティークトレイン
第二次大戦以前の1930年代に蒸気機関車と同じく黄金期を迎えたのが、金属製やティンプレートのOゲージ以上の模型です。価格により子供向けの廉価な製品から、現代でも通用する本格的なスケールモデルに至るまで、ゼンマイ式、当時は走りだった電気式、そしてライブスチームという動力方式で、数多くの名品が生まれました。
これらのビンテージトレインのコレクターで有名だった、英国ロンドントイミュージアムの創設者 Allen Levy氏が復刻した Ace Trainsをはじめとする、最近のイギリス市場に多く見られる、Oゲージ以上の大きさの模型はクラシック感あふれる美しい芸術品とも呼べるような仕上がりで、なかなかの人気ですが、それらをしても及ばない重厚感と独特の存在感がアンティークの模型にはあります。かつての膨大なAllen Levy氏のコレクションの一部は、現在は日本の「バンダイ」が管理し、軽井沢から移転し、栃木県下都賀郡の「おもちゃの町」に開設された「バンダイミュージアム」にてご覧になれます。
http://bandai-museum.jp/
Bassett-Lowke
当時の高級品。ゼンマイ仕掛けはHornby O Gaugeなどと比べると、まるで柱時計の機械が入っているような、丈夫で精巧な作りです。
1910~1920年代
電気式の模型は先台車の車輪が交換されています。オリジナルはゼンマイ式と同じディスクタイプの小径です。人気のシングルドライバーで少々高価ですが、1920年以前の古い物としては程度の良い物が入手可能です。
1910年代初頭の製品で、タンク機関車としてはアンティークオークションでは一番の高値ではないかと思います。
1910~20年代の物としては、このPrecursor Tankは、値がこなれていて、入手しやすいです。同じBassett –Lowkeでも製造はBing製、Marklin製など、色々あります。当時のドイツのメーカーが英国ブラントに下請けのように製品を納めていた事情が伺えます。
1930年代
このブランドの中では廉価版です。テンダーの車番違いで、1920年代の製品から1930年代の製品があります。オークションでもよく見かけます。
スケール感にあふれた製品。数が少なく比較的珍しいタイプです。
当時の販売台数はかなりの数だった様で、予算に応じて選べます。程度により価格もまちまちですが、完全な新同品は以外と見つかりません。ゼンマイ式と3線式の電気模型があります。
1940年代
1920年代の終わりから60年代の最後まで、ゼンマイ式と電動で様々な製品があります。Bing製もあります。年代にかかわらず、出来の良さと質の割に、生産数が多いのか、アンティーク市場では廉価で非常に入手しやすい模型です。
この時代になると本格的なスケールモデルが登場します。流線型機関車は人気が高く、Ace Trainsが近年復刻したLNER A4 型のBassett-Lowkeのオリジナル製品は特に高価です。
1950年代
廉価版です。時代も新しいので、きれいな模型が手に入れやすいです。
そう言えばかつて「バンダイ」の倉庫にポツンと置かれていました。英国のオークションならかなりの高値です。
Marklin
Bassett-Lowkeブラントだけでなく、Marklin ブランドでもO gauge, No1 Gaugeなどで、英国型の機関車を数多く生産しています。中には「おーっと」と思うような英国型らしからぬ外観の製品も混じっています。
Bowman
1920から1930年代のOゲージのライブスチームのメーカー。だいたいがタンク廻りが少々焦げた物が多いです。
Bond’s O
1920年代~50年代まで生産されたフリーランス製品。ゼンマイ式もあります。
Bing
フリーランスのような製品が多いですが、ライブスチームから電気模型、玩具のような製品も含め様々な英国型車両を生産していました。Bassett-Lowke ブランドでも高級機種を生産していました。Table Top シリーズは専用軌道のOOゲージです。
Leeds (LMC)
1920年代から大戦後の60年代まで、改良されながら生産されたロングセラー
いわゆる特製品のようです。
木製のブロックボディに紙が貼ってあります。このメーカーの客車にも同様の紙貼りの木製があります。
Hornby O gauge
子供向けの玩具のような製品から本格的なスケールモデルまで揃います。レールや客車、貨車が付属したセットもあります。動力はゼンマイ式と3線の電気式があります。
当時はBassett-Lowkeなどに比べるとはるかに廉価な製品を大量に市場に出していたのだと思います。第二次大戦以前のゼンマイ式や玩具っぽい廉価版は、保存状態の良い物が少なく、結構高値です。戦後の製品は見かけは同じように見えてもブリキが薄い、ゼンマイやギアなどの材質が悪いと言う、コストダウンされた製品で、箱付きのきれいな出物が多い割に、あまり人気がありません。
1920年代
小さいタンク機関車の中ではこの時代の物が1番人気です。
20年代のNo1シリーズは各パーツが大ぶりで、真鍮の削りだし部品などが使われています。ボディのブリキが厚く、組立は部分的にボルト留めです。人気があり、程度の良い物は高値です。古い物でもゼンマイは問題ない物が殆どです。
上記のNo1シリーズと外観はよく似ていますが、バッファーが真鍮製でないとか、各部分材質が変わっています。
初期のHornby O Gauge 製品の中ではしっかりした作りの高級版です。
1930年代
No 0 シリーズは、ディフォルメされ、玩具然としたティンプレーの製品です。しかしこのセットだけは箱まで揃うとなかなかの高値です。後述のMet toyなどの同じ A4型機関車の玩具と比べて見た目は同じようですが、こちらの方がしっかりした作りです。当時も価格差があったようです。
1930年代の製品では手頃なNo1シリーズ。ゼンマイは小さいので、それほど長時間は走りません。より廉価版の M3 シリーズはロッドも省略されています。片側の動輪だけの駆動なので、少々迫力に欠けます。
ゼンマイ模型の中では最強です。ディフォルメされたボディは、スケール感には乏しいですが、小さいボディに大型機種と同じゼンマイが入っていて、調子の良い物だと弾かれたように走り出します。実際に走らせて楽しむなら No1 Special シリーズがお勧めです。
初期の電気模型はあまり調子の良い物がありません。特にこの6V仕様は高価ですが、実用性は低いです。ゼンマイ版には当然付いていませんが、電動版の頭の電球は何とかならない物でしょうか。
Special No2 4-4-0シリーズはこの GWR仕様以外に LMS Compound, LNER 4-4-0, SR L1 と4種有り、シャーシは共通ですが、スケール感を感じられるHornby O Gaugeの高級機種です。ゼンマイ式と電気式があります。スケールモデル風なのに電気式は頭にねじ込み式の豆電球が付いているのが何ともいえません。デザインとしては良いのか悪いのか。Basset-LowkeブランドのMarklin製の機関車がオイルランプを異常に大きく作り、無理矢理中に電球を入れたのと比べると、このあたりはHornbyの合理性を感じます。
1930年代末~40年代
上記の4-4-0シリーズをさらに充実させた、より高級版のNo4シリーズ。ほとんどスケールモデルと言っても良いしっかりとした仕上がりです。2.3年ほど前までは、どんどん値が上がる、プレミアム品でしたが、近頃 Ace Trainsから復刻版と言うか、完全スケール版が発売されたのが原因か、最近の価格はほぼ安定しています。ゼンマイ式と電気式があります。例の電気式の頭の電球は、このシリーズから付きません。
Hornby O Gaugeの最後の意欲作。本格的な!? スケールモデルです 。Bassett-Lowkeの高級機種にも迫るほど、 アンティーク市場では技術的にも評価も高く、Hornby製品では、一番の高値です。
1950年代~
50年代以降はOOゲージに移行する過渡期で、OOゲージ模型は発売当初は高価だったので、廉価な価格帯を受け持つのが逆にOゲージだったようです。ブリキは薄くなり、ゼンマイの材質も落ちていますが、日本の1950年代年代のゼンマイ玩具と比べれば、まだまだ遙かに丈夫で、しっかりとした作りではあります。MO ,No20シリーズは戦前から続く廉価版の玩具っぽいシリーズで、ゲージこそ同じ32mmですが、車体はかなり小さくなっています。
Mettoy , Chad Valley, Brimtoy, Bing, Astra
鉄道模型と言うより玩具の仲間に入るのかもしれませんが、HornbyのMO, No 20シリーズと同じような規格です。ゲージはOゲージになります。車体は一般のOスケールの模型よりかなり小さい物もあります。
「外国型」もふくめ様々な製品があります。
1910~20年代の同じGNR のアトランティック型機関車
メーカーにより作りが違います。
Walker-Fenn ( ” Controlled Clockwork ” Loco )
ネットで検索しても出てくる画像はそんなに多くありません。動力部分は同じで、先輪が付いた少々ボディが長いタンク機関車とCタンク、形式的には2種有るようです。1920~30年代に製造されたゼンマイ動力のOゲージタンク機関車です。動力部分はドイツの Marklin製と言うことですが、Marklinには同じようなボディのゼンマイ式機関車は製品にありますが、このWalker-Fenn と呼ばれる速度コントロール装置は付いていません。
上の2台の機関車はMarklin製のオリジナルです。普通のゼンマイ式です。ボディはどう見てもこれから紹介するWalker –Fennの機関車と同じに見えます。下段の写真の機関車は逆転機がWalker-Fennの位置と同じです。但し、Walker-Fennでも逆転機の位置が違う物もあります。
Walker-Fenn Ogauge 0-6-0 Tank LNER
キャブ背面の大きな「つまみ」を回すと、キャブ内に見える蓄音機のガバナーのような物が開いたり閉じたりして、速度を可変します。速度を速めたり、遅くしたりは何度でも可能です。低速時はゼンマイ力もセーブされます。この機種は逆転機が屋根側でなく、背面に出ているタイプです。
先輪が付いたタイプ。基本的な構造は同じです。
Walker –Fenn の走行がご覧になれます。とってもよく走ります。
http://www.youtube.com/watch?v=C3QjRFmYSGk